ぼーしやJAM工房

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森のスケッチ

「やっ。今日は」?
いわなは非常に神経質な魚です。だから人の釣ったあとにいっても、まず絶対といっていいほど釣れません。となると当然人より一歩先にということになり、朝早くから、が、前の日の夜中からになり、またより上流へ向うことになります。
ところがその上流は熊の縄張りでもあります。いわな釣りに山へ入った人が時々熊に出会うのもこのためです。
熊は人の気配を感ずると、向うで逃げてくれますが、お互い気づかずにバッタリ出会ったりしたら、これはちょっと難しいことになります。
「やっ、今日は」
インデイアンはそんな時、片手を高く上げて挨拶するといいます。そして相手から眼を離さずにこういいます。
「どうぞお先へ‥‥‥」
自分は一歩わきへ寄って、熊に道をゆずるとか。果たして日本の熊にこの挨拶が通ずるかどうか。危ない、危ない‥‥‥。
熊の縄張りを歩く時の3つの心得。
1 • 大きな声で歌を唄って歩く。自分で唄い続けるのはかなわないからラジオにおまかせとい うのも1案。
2 • 手をたたいて歩く。これも早く相手に気づかせるための1方法。
3 • タバコを吸って歩く。
「え? タバコと熊と関係あるの?」
匂いなんですよ。動物はすごく匂いに敏感だから、へんな匂いはすぐかぎわけるし、そこは避けて通るんです。
といっても風向きによって、もし熊にタバコの匂いがとどかなかったりしたら大変ですね。要するに3つのことを交替にやればいいわけです。

「これは俺の大好物」
この地方のとうもろこしは、すごくうまいです。つぶが大きくて、柔らかくて、甘くて、本当に天下一品です。このとうもろこしを食べに来るだけでも北信五岳地方を訪れる価値があります。
こんなに価値あるとうもろこしを動物たちが見逃すわけがありません。
ところが問題は、人間は食べるのにお金を払うけど、動物はちょいと失敬というわけで、実に、ここが問題なんでありますね。
夏から秋にかけて、高原のとうもろこし畠は文字通りたわわにとうもろこしが実をつけます。冬眠を前に秋は熊がすごい食欲ぶりを発揮します。たぬきも‥‥‥。熊は雑食家ですが、特にとうもろこしは大好物で眼がありません。そこで山ぞいのとうもろこし畠には危険信号がともるという次第です。
「今年は熊が早い‥‥‥」こんな記事が新聞に出ました。早いってことは”里に熊が来るのが早い“という意味です。里=とうもろこし畠です。
あのでかい身体で、畠にでんと腰を下ろし、むしゃむしゃととうもろこしを食べられたのでは、たまったものではありません。
「あー、うまい」
熊は思わず声を出していいました。
「あいつばかり食って、あーうまいとは何事だ。俺たちも行こう」
こういったのは早耳のたぬきです。向こうの方でムジナも聞き耳をたてていました。そんなわけで、今年はとうもろこし畠をねらう “山の盗賊ども” の数がぐんとふえてしまいました。

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