光は風にのった。
風がゆっくり流れていく。
光のつぶを大空にまき散らしていく。
それは輝きながら音もなく落ちた。
森は光につつまれてしまう。
梢の先がキラキラ光っていた。
森は光だ。
大空に浮き上っていくように見えた。
空がうつっていた。
緑の葉がすけて見えた。
くっきりと空に梢がうつっていた。
光が流れた。
森は魔法使いだ高原はいま夏のまっさかりである。
真青な空を見上げながら森がいうにはこうだ。
「森は空のねぐらだ」
「ねぐら?」
「夜になると森の上におおいかぶさる」
だから夜空の星は手のとどくくらい近くに見える、と森はいった。
空はすっかり支度を整えると、
朝まだ森が目を覚さないうちに、
そっと梢まで登る。
そこから空へ飛び立つ。
そして遠くから森にささやく。
光を風にのせる。
それが合図だ。
光の中で鳥たちの声が急にひろがる。
森にしみわたる合唱だ。