夏の薬草
「どうせ」
そういって出されたお茶を遠慮なくご馳走になる。一口飲むと大変おいしい。でも緑茶とは少し違う。多少にがっぽく甘い。全く抵抗はない。
こちらが少し考えているふうなのがわかったのか相手がこう聞いた。
「どうですか、味?」
「おいしいですが、普通のお茶と違うのですか?」
笑いながら答えた相手の話はこうである。
たんぽぽの花や葉(全草)と笹の葉ときはだ、それにいかり草、げんのしょうこう、たらの木の皮をまぜたお茶だという。
「うちは少しとう尿の気があるので‥‥‥」
野山の草花はほとんどが薬草だと思っていい。手近なところでどくだみ、しそ、よもぎ、せり。その何種類かをまぜると香りも味もよくなる。いわば草花茶、自然茶。ビタミンがいっぱい含まれ、美容にも健康にもいい。乾燥させ、緑茶のように熱湯を注げばそれででき上り。
夏祭り
山に登る。山はその周辺の人たちへいろいろな恩恵を及ぼす。山で一夜を明かしご来光を拝む。山のお寺で祭典を行なう。山の祠にお酒をそなえ、水をこうお祈りをしたりする。今年の豊作を祈る。お酒とともに神楽とか舞や古くから伝わった民俗芸能を奉納したりする。
祭りには地区ごとにいろいろなかたちがある。勇ましくはなやかなものもあれば、非常に静かなものもある。祭りは遊びではない。村人の心である。
野尻湖に琵琶島という小さな島がある。島に宇賀神社という神社がある。毎年八月二十六日から三日間大祭を行なう。島で祭典を行なったあと、神さまがみこしにのり野尻湖を渡る。さわやかな高原の夏風にふかれ、ヨットやウィンドサーフィンの舞う湖を静かに渡り野尻の村につく。みこしにのったまま神さまは村を一廻りする。その夜は村で泊り、翌日また湖を渡って帰っていく。山の湖のさわやかなお祭りである。