北信から新潟にまたがってそびえ立つ5つの山がある。
戸隠山 (標高 1911メートル)
飯綱山 (標高 1917メートル)
黒姫山 (標高 2053メートル)
斑尾山 (標高 1381メートル)
妙高山 (標高 2446メートル)
これらの山を北信五岳と呼んでいる。この山にかかえこまれるように野尻湖がある。
古い歴史と伝説の語りつがれている山と湖である。冬は厚い雪に閉ざされる。雪どけとともに花が舞う。雪は命をはぐくむ。かつてあらあらしい活火山だった山々はいまはその火山活動をやめ静かに人々を見守っている。人々は歴史をを歩む。人々と共に山は今日も歴史をきざんでいる。
かっこう(ホトトギス科)
こだまする声を追う。白樺の林をぬけ、から松の木々をぬい、声を追う。間近に迫ったと思うと声はぴたりと止まり、しばらくするとまた遠くの林でこだまする。まるで夢の中でこだましているようだ。
初夏の山国へ来る旅の鳥。ホトトギス科で、カッコーと梢を渡る鳴き声で親しまれているのは雄。雌はあまり鳴かないが、たまにピピピピ‥‥‥と早口に鳴く。モズやホオジロの巣に卵を生み落とす。他の鳥に育ててもらうのだ。モズやホオジロもお人よしだ。
人前にはほとんど姿を見せない。夏を代表するカッコウ。その声はきょうも白樺の林をぬい木々の間でこだましている。
おっ、くまだ!
数年前のことだ。国道十八号線の信濃町付近をくまが歩いていた。はじめは犬と間違えたというから小型のくまである。
くまは陽気に歩いてきた。しかし見つけ人間はびっくりした。びっくりした人間を見つけてくまもびっくりした。
くまはよっぽどのことがなければ里に下りてこない。まして国道などには姿を現さない。人間とは生活圏をわけている。だから共存している。さわやかな風にさそわれ、ふらりと散歩に出て道に迷ったのだろう。この地方の山にはくま、あなぐま、むじな、きつね、りす、うさぎ、たぬき、てん、いたち、むささび、おこじょなどもいる。みんな森の仲間たちである。
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はないかだ(ミズキ科)
花を筏にのせる。筏の上で五月か六月に淡い緑の小さな花を開く。花は筏にのって季節を流れていく。山あいの谷や木々の繁みの陰からそっと季節を見つめている。やがて八月から九月に同じ筏の上で実を結ぶ。熟しきると実は音もなく筏をはなれる。
筏とは葉のこと。葉の真中で花を咲かせ実をつける。ミズキ科の不思議な植物だ。木の高さは1メートルほどである。若芽と若葉は山菜として摘む。樹木で山菜になるのも珍しい。ゆでて水にさらし、おしたしやゴマ・くるみみそであえる。口にふくむと山あいの味がひろがってくる。甘味のあるくせのない果実酒も山のみの珍酒である。