こんがらす
こんなうたがある。焼山のこんがらす、羽がなってもたっといの。こんがらすは雷鳥のこと。焼山の雷鳥は羽音をたてて飛ぼうとするが飛べやしない、という意味。いつの頃からか伝わっている古い山里のうたである。
鳥のうた
ツイーッ (カワセミ) キョロロキョロロウ (アカショウビン) チリリリリ (やまひばり) キョロンキョロンポピュロポピュロ (クロツグミ) ブッポウソウ (このはつぐみ) 朝森がしらんでくると、鳥達の大合唱がはじまる。
カラスとガラス
畠に種をまく時はカラスが見ていたらまいてはいけない。種を食べられてしまう。そのカラスが懸命にガラスをつついていた。ガラスの向こうにもカラスが一羽いる。カラスの喧嘩相手はガラス。カラスは気の強い鳥である。
言葉
月の夜まわり
チョンチョン火の用心‥‥‥これは人間の夜まわり。人間でなく月が夜でると ”月の夜まわり“ という。山里の夜を月がまわっていくさまが目に浮かぶ。冬など「今夜は月の夜まわりだから‥‥‥」という。月の夜まわりは雪が少ないという意味。
ごしたい
「腰が痛い」がなまったのかもしれない。
「あーあ、ごしたい」などという。ああ疲れたという意味。疲れたからからだを休めたいという感じである。野山の仕事は大変だ。ごしたくなる。雪が溶けると山里にはごしたい仕事が山ほどある。
味
えびがらいちご
山あいの緑の間にこのいちごを見つけると心がおどる。直径二センチほどもある大粒ないちご。山のいちごは種類が非常に多いが、沢山の毛におおわれて育つえびがらいちごはの中の珍種。すごく甘い。果樹酒、ジャムにする。バラ科
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うさぎの二度ぐそ
?なんのこと?
野うさぎは一度した自分のうんこは食べてしまう。きたない、なんていちゃいけない。ビタミンを十分吸収するためだ。山野を歩くとうさぎのうんこがかたまって落ちている。あれはうさぎの二度目のふんである。
戸袋の穴
山間の家の戸袋にまるい直径十センチほどの穴があいている。あれ何の穴?まさか人間がわざわざ穴を開けるわけがない。あかげら(キツツキ科)の巣。かれらの口ばしは固く木なら何でも穴を開けてしまう。あかげらにご用心。
白樺とだけかんば
山の木にしらかばとだけかんばというのがある。ともにカバノキ科。両方とも白っぽい木肌をしているんで、同じ木だと思っている人が多い。同じ仲間だが、違う木である。しらかばは粉をふくような白い肌の木。だけかんばは灰色がかった白。泡褐色のもある。四月から五月に花を開くが、しらかばは花穂が垂れさがり、一方は上向き。それに葉の支脈が多い。
1983、7 池宮 健一