ぼーしやJAM工房

ぼーしやJAM工房からのご案内です。

西洋梨の話し

「洋なしのジャムをフランスで食べたけれど あれは、美味しかった」
そう アンジェラのお母さんのレオナが話してくれました。
「洋なしって、あの下ぶくれな果物だよね。フランスか、フランスにも洋なしはあるんだ?」
「あるわよ」
「ああっ。ラ・フランスなんて洋なしがあったね。向こうが本場かな?」
ただ、洋ナシの味は僕の母が洋なしのパイを焼くので知っているのですがジャムとのイメージがどうも結びつきませんでした。洋なしのはっきりした味を思いつきません。酸味も無かったような気がするし。何となくいわゆる和梨と同じで水分ばかりの様な気がしてなりません。 確かに“洋なしの缶詰”がありました。それでもジャムのイメージではありませんでした。

レオナからいろいろな料理とそのイメージを教えてもらいました。僕の持っている料理のイメージは僕の育った環境に由来しますよね。それと彼女の育った環境からの味や料理のイメージはちょっと違いました。僕は“醤油”、彼女は“バター”みたいな感じです。 
例えば 僕は野菜を茹でるとすぐ醤油をかけて食べたくなりますが、彼女はすぐバターをからめます。例のイメージはちょっと違いますが、ロースト・ビーフです。もともと僕には大きな肉の塊を料理する感覚はありません。そこに持ってきて牛となると高級なイメージでした。ところが、彼女は言います。
「安くて固い牛肉のかたまりも時間をかけてオーブンで焼いてね、柔らかくするのよ。庶民的な料理なのよね」
ロースト・ビーフに固くて安い肉、そんな風には考えた事も無かった。と思いました。
「チキン・ポット・バレイ・スープもそう。もう年をとった鶏って安いでしょ。その鳥を長い時間をかけて煮て、大麦を入れて作るスープ。あなたもすきでしょ」
一羽の鳥を丸ごと使うのです。そお言えばスーパーにちょっと年をとった鳥を割と安価な値段で売っていました。長い時間をかけて焼く、煮る。日本でもそういう料理はありますが、レオナの話は暖炉などの火を使った料理を思い起こさせます。

レオナのお母さんジョセフィーンは、アイルランドから一人でカナダへやって来ました。100年前の話しです。15歳の時からカナダへ行きたかったそうです。100年前の時代にアイルランドから女性が一人でカナダへ行こうと思い、実際に来たわけです。しかも紹介された女性の住所だけを頼りに向かったのです。 アイルランド人ってとても独立心の強い、行動力のある人達なんですかね? あの頃のカナダってヨーロッパの人達にとってどんなところだったんでしょう?何か夢を掻き立てられるような所だったのかも知れません。
だからレオナの料理はアイルランドの家庭の料理です。僕はアイルランドの家庭料理を教わったのです。

アイルランドにはレオナのお母さんの親戚、おじさん、おばさんがいたのです。そんなわけでレオナは1度だけお母さんのジョセフィーンとお姉さんと3人で船に乗ってアイルランドを訪れています。その行きか、帰りにフランスのホテルで“洋なしのジャム”を食べたのです。ですから、レオナにとっては、洋なしのジャムの味は特別だったのかも知れません。
僕は彼女の料理のイメージは好きなのです。だからこの“洋なしのジャム”は僕の頭に残りました。

夏になって本格的にジャム作りが始まりました。僕は果物の相談に山下さんを訪ねました。するとどうでしょう。目の前に洋なしの実がぶら下がっているではありませんか。いつも山下さんと話をする庭先に洋なしの木があり、そこに実がなっているんです。どうして今まで気がつかなかったのでしょう。自分でも可笑しくなりました。あの下ぶくれな実です。ただ洋なしの実はまだ青く固そうなんです。収穫はまだまだだいぶ先の事の様に見えました。
「山下さん、洋なしもやっているんですね」
「ああ、やってるよ」
「収穫はいつ頃なんですか?」
「種類によって多少違えけれど、秋になれば収穫になるな」
「今年は、洋梨をジャムにしてみようかと 思っていたんですよ」
「そりゃあ いい。やってくれ。熟したら 連絡するよ」

こんな風に 100年前からの話しがあって、しかもアイルランド、カナダ、フランス、日本と大西洋と太平洋をその話が渡って、僕たちの“洋なしのジャム”は始まりました。“風が吹けば桶屋が儲かる”的な話かもしれませんが、面白いですよね。

セイヨウナシ
和梨と同じで起源は中国、だが原産はヨーロッパ。
バラ科、ナシ属
中国から梨がヨーロッパに渡り 分化したものが洋なしになる。
古代ギリシアで栽培されていた記録がある。共和政ローマ時代には6種類の洋なしの記述があり、帝政期ローマでは40種以上の栽培種があった。
日本では明治時代に導入された。本格的に食用にされるようになったのは昭和後期。産地以外でも食べるようになったのは近年。
ちなみに、世界で最も生産量の多いのはイタリア、2番がフランス。

100g中栄養成分
カロリー    54kcal
たんぱく質   0.3g
脂質      0.1g
食物繊維    12.4g
ビタミンE   0.3㎎
ビタミン1   0.02㎎
ビタミン2   0.01㎎
ナイアシン   0.2㎎
ビタミン6   0.02㎎
パントラン酸  0.09㎎
ビタミンC   3㎎
カリウム    140㎎
カルシウム   5㎎
マグネシウム  4㎎
リン      13㎎
鉄       0.1㎎
亜鉛      0.1㎎
銅       0.11㎎  

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2020 ぼーしやJAM工房