僕がリンゴジャムを作り始めたのは、紅玉リンゴを見つける事ができた1980年頃です。
そのころはリンゴは甘い種類が主で紅玉のような酸味のある古い種類のリンゴはどんどん無くなっていました。
このリンゴの産地の北信州でさえ無くなっていたのですから日本中でかなり減ってしまったのですね。
紅玉リンゴを探して友人の友人と訪ね歩きようやく長野市、当時は豊野町の柳沢リンゴ園と知り合いました。
これからが僕のリンゴジャム作りの始まりです。
リンゴ作りを始めた頃、しばらくの間リンゴの農家で働くことができました。
リンゴの花摘みから始まって撤実(中心のみを残して周りの小さな実を除く作業)の作業をしながら、農家の方にリンゴの木の話、虫や鳥の話などいろいろ聴くことができました。
この経験はジャム作りに僕なりのイメージを作るきっかけになったような気がします。
リンゴと人とは長い歴史がありますね。
アダムとイブの話にも出てきますし、ギリシャ神話の中で美女にささげるリンゴの話、ウイリアムテルのリンゴ、アレキサンダー大王がカザフスタンから持ってきたと言う話もあります。
最古の物と思われるリンゴの足跡はトルコでは紀元前6000年のリンゴの化石が見つかったそうです。このときすでに人はリンゴを食べていたんですね。
それにしてもリンゴの栽培がヨーロッパで盛んになったのは16世紀の頃だそうです。
現在日本で皆さんが食べているのは明治以後入って来たヨーロッパ系のリンゴです。もちろん日本にもかなり昔からリンゴがありました。平安時代にはすでに中国から入って来たリンゴがあったことが記録されています。「和リンゴ」と呼ばれた種類です。現在はほとんどそれらのりんごは食べられていません。しかし信濃町のお隣の飯綱町には“高坂リンゴ”として今も栽培されています.
現在世界にリンゴの種類は7000種以上あるのだそうです。
その中で栽培、消費量が一番多いのは“ふじ”です。世界で最も人気のあるのは日本の青森県で生まれた“ふじ”なんですね。僕が使っている紅玉は1800年頃にアメリカ.ニューヨーク州で生まれました。日本では1987年頃から栽培されています。
今紅玉リンゴを頂いているのは長野市と飯綱町の農家です。
どちらも使用農薬の量を極端に減らしてリンゴの木の生命力を活かした栽培をしています。リンゴ畑に行くと晴れた日など気持ちが良くて木にハンモックをかけて昼寝のをしたいほどです。ほんとにこの二軒の農家と知り合ってラッキーでした。彼らが話してくれる、自然のありようの話は僕たちが忘れかけてている人と自然との関わりの姿の話かもしれません。
そんなリンゴの話をしながら僕はリンゴジャムを作っています。
このリンゴジャムを食べて頂いた方々に“自然の息吹”が伝わることを願っています。
2012年7月1日