ぼーしやJAM工房

ぼーしやJAM工房からのご案内です。

チェリープラムの話し

「こんなのがあるよ」
山下さんの果樹の林を二人で歩いている時に彼が言いました。
「プラムなんだけれども。むかしからあった種類なのだが 誰も名前を知らない」。
山下さんが見せてくれたプラムは赤茶っぽい色をした小型のプラムでした。食べてみると甘みと酸味のつり合いが良くて、独自の味があります。古い種類って割と酸味の強いものが多いと思っていたのですが、これは美味しい果実でした。
「おいしいですね」
「そうだろ。これはうまいよな」
「どれくらい前からあるんですか?」
「さあ、親父が植えたんだろうが、分からねえな」
山下さんはその名の無いプラムに“チェリープラム”と名前をつけました。
チェリープラムの木は それほど大きな木では無いのです。その枝にはたくさんのチェリープラムが付いています。
「三脚持ってきて少しとって行くか?」
「そうですね。いろいろやってみます」
その時から ぼーしやJAM工房のメニューにチェリープラムが並んでいます。
チェリープラムを育てているのは、山下さんだけと言う事は、チェリープラムのジャムがあるのは、ぼーしやJAM工房だけってことになりますね。少し気持ちがいいですね。

ところで木って他の木と話をしているんでしょうか? チェリープラムの木はその仲間やプラムの木、桃、杏、プルーンの木と連絡を取り合っているのでしょうか? 前に木がコミュニケ—ションを周りの木ととっているかと言う事が父と話題になりました。
「木って話をするのかな?」
「するんじゃない。人と形が違うだけだと思うけれど」
“森からの手紙”を書いていた時にそんな疑問を父は 北海道にある東大の演習林におられた高橋延清教授こと“どろ亀さん”に手紙を出しました。
「木はコミュニケ—ションをとっているのでしょうか?」
「とっていると思います。まだ良く分かりませんが、独特のコミュニケ—ションの方法があるのでしょう。」
何度かの手紙のやり取りがありましたが、 その手紙の中で森の話を独特な口調で説明していただきました。そして森の先生、どろ亀さんの返事はそんな風だったと思います。

そんなころ、本屋さんで木についての本を見つけました。それはフィトンチッドの説明をしていました。
樹木が虫などにたかられて傷つくと 木はある種の匂いを発し始めます。これには殺菌効果があるんですね。この匂いを感じたまわりの木も 傷ついていないのに同じ匂いを発し始めます。隣から隣へ 頬っぺた回しみたいですね。自分を守るためですが、周りに伝達する所から見ても、これは森の助け合いのコミュニケイションだと思いました。
 僕たちが森を歩いていて気持ちが良いですよね。このフィトンチッドは、人には木と違う効果を与えてくれます。それはこの揮発性の匂いが 人をリラックスさせる性質があるからです。
ただこれだと 風が吹くと風下にしか伝わらないことになります。

カナダのブリテイッシュコロンビア大学のスザーンシマード教授の研究はびっくりさせられるものです。
彼女の研究は、森の木々はそれらの根を通じて他の木々とコミュニケ—ションをしているという物でした。キノコなどの菌糸は森の地面の下でとても広く広がっています。これを木は使ってメッセージを根から菌糸を通して他の木々へ送ったり 受け取ったりしていることを実験で証明したんです。
また 森の中で古い、大きな木が大きな役目をしていることが分かりました。いわゆるハブ空港とか、ハブ港の様なものです。言い換えると“マザ—ツリ—”なんて言い方を彼女はしていました。コミュニケ—ションの中継地として機能しています。そして弱い木や小さな木の足りない栄養素を 補いあっているのです。
また大きな木は歴史を記憶していて 育ってくる小さな木を補助していると言います。
“森は大きな助け合いのコミュニテイ—”スザーンシマード教授は言います。

この他にも木についてたくさんの実験が世界の大学で行われていました。オーストリア、アメリカ、ドイツきっと日本でも。
そう言えば、身近な話題でも 野菜に音楽を聞かせるとよく育つ、なんてのがありますよね。

そうです。木はコミュニケ—ションをしています。 
畑となるとまた話は変わるかも知れませんが、何年も続いている果樹園でキノコが生えていればきっと。
山下さんの果樹の林は大きな杉や他の木があります。果樹は植えられてまだ100年も経っていないでしょうが、古株のチェリープラムの木がまとめ役になって きっとにぎやかにやっているに違いありません。
「糖が足んねえぞお」
「今、送るよ」
なんて 会話が地下を走り回っているのかも知れません。

プラム

バラ科 スモモ属
桃に比べると酸っぱいから“すモモ”と和名ではスモモとなったと言われています。原産は中国。
日本には古くから伝わっていて室町時代の和歌にも詠まれている。
19世紀にアメリカで品種改良がおこなわれ それが日本に再移入されて現在 プラムとして栽培されている。

生果100gあたり
エネルギー 45kcai
脂質    0.3g
炭水化物  11g
食物繊維  1.4g
たんぱく質 0.7g
カリウム  1.4g
カルシウム 6㎎
ビタミンA 345IU
ビタミンC 9.5mg
鉄     0.2㎎
マグネシウム 7㎎
   

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