ぼーしやJAM工房

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赤フサスグリ

赤い実が縦に並んで長細い房になります。赤い実は透明で中が透き通っているんですね。そのために太陽の光が透かして赤く輝いています。梅雨の雨の後など、緑の葉に囲まれてとてもきれいな姿です。
酸味がはっきりしていて、きれいな赤、父は焼酎漬けにしていましたが、僕はジャム屋なんですから、ジャムにしてみたいと思いました。
いい感じです、酸味が効いていて美味しいジャムになりました。

赤フサスグリの木が信濃町のどこの農家にもありました。出荷される事も、本人たちが食べる事も無い、果樹がどこの農家の庭の端に植わっているのです。僕は不思議に思いました。
もしかしたら“ポポ“と同じように戦時下の食料確保に政府が農家に配ったのかも知れないと思って、調べてみましたがどこにもそのような記録はありませんでした。
赤では無いですが、黒フサスグリは戦時中イギリスで、輸入ができなくなったオレンジの代わりのビタミン補給に良いベリーとして 推奨されたそうです。
ビタミンを沢山持っているんですね。

ポポをご存知ないかもしれませんね?ポポは 北米、カナダ・アメリカ東部が原産のバンレイシ科の植物で、大きな木になります。果実は熟すととても甘くねっとりとした果肉です。温暖な気候の所ならどこにでも生育できます。それなのに熱帯の植物の実の様な感じですね。
ポポは明治時代に移入されたと言います。僕が農家から聞いた話では、先ほども書いたように戦時中に食料確保のために政府が農家に配ったそうです。ただ、それでもメジャーな果物にはならなかったんですね。
赤フサスグリもそんな感じかと思ったのですが。

野尻湖畔には昭和の初めに宣教師が開いた国際村があります。
ヨーロッパ原産の赤フサスグリはヨーロッパから、またはアメリカ、カナダから野尻湖畔の国際村へやって来たのかも知れません。それは、グースベリーや、ルバーブも同じですし、ブルーベリーも国際村のある家庭の庭にあったという話も聞きました。
自分の慣れ親しんだ野菜や果樹を自分の国から持ってきたんですね。それを近くの農家に栽培を頼んだり、自分の家の庭に植えたりしたわけです。
今なら大変な事ですが。
なかには、信濃町の農民があまりに貧しかったのを見たカナダ人宣教師のストーン氏が 農業改良を勧め、スイート・コーンなどをカナダから持ってきたという事例もあります。

国際村があったことで、いろいろの種類の野菜や果樹が早くから野尻湖畔では栽培されていました。
僕が果樹・野菜のそれぞれの日本での始まりに興味を持ったのはそんな理由からですね。何しろ、こんな田舎なのに ここで栽培され始めたのが 日本では最初、なんて面白いじゃないですか。
港があるわけでも無く、町でも無い、都会から遠く離れた山の中の湖畔の村です。東京でも横浜でも神戸でも堺でも長崎でもなくて 野尻湖畔なんです。

ある時、妙高山を登った時におもしろい実を見つけました。コマガタケすぐりです。僕はコマガタケすぐりを何度か摘みに出かけました。妙高山の中腹まで、愛犬を連れて気持ちのいいハイキングです。
自然の物は 都合よくいっぺんに熟してはくれないので 結局その度にテーブルの上にしばらく飾って眺めていただけで終わってしまいました。
でもこれは、日本の固有種なのだそうです。

今、農家は新しい商品を探していますね、世界のどこかで栽培されている野菜や果樹が、日本で栽培されたり、日本の野菜や果樹が世界のどこかへ行って育ったりしています。カナダでも日本の野菜を栽培するオーガニック農家が増えていました。
それから、新しい品種を作ってライセンス生産なんてやり方が多くなってきました。日本の人が開発したリンゴをその人の許可を得て他の国の人が栽培したり、その逆だったり。著作権と同じですかね。
そうするとやはり、もともとはどこで生まれて、どんな物だったかって知りたくなりますよね。

ちょっと前に亡くなられた詩人、作家の矢川澄子さんと赤フサスグリを摘みに行きました。彼女の家のそばの農家の庭の隅にやはりあったのです。その赤フサスグリは見事に大きな実を長い房につけていました。
矢川さんは枝の前にしゃがみこんで 枝をかき分けながら奮闘していました。頑張ったかいがあって買い物用のビニール袋にいっぱい摘んで帰って行ったことを覚えています。
山ブドウ取りをしたり、雪の斜面でそりをしたり、子供っぽいかも知れませんが、そんな遊び仲間だったんですね。
赤フサスグリはそんな分けで、彼女の事を想い出させます。彼女が訳した、ポール・ギャリコの“猫語の教科書”はまだ僕の本棚に並んでいます。

そう言えば、モリアオガエルが 赤フサスグリの実が赤くなる頃に卵を産みます。水のある上に突き出した枝や葉っぱに綿あめの様な卵を産み付けます。それが1週間ほどでオタマジャクシにかえって綿あめの卵からポトリポトリと水の中へ落ちて行きます。赤フサスグリの実が赤くなる頃は、梅雨ですが、自然には良い季節でもありますね。

赤フサスグリの日本への来方が分かったら続きを書きますね。

赤フサスグリ

スグリ科  スグリ属
ヨーロッパ原産

生食 100g中
カロリー  56kcal
たんぱく質 1.4g
脂質    0.20g
炭水化物  13.8g
灰分    0.66g
食物繊維  4.3g
ビタミンA 44IU 
ビタミンE 0.1㎎
ビタミンB1 0.04mg
ビタミンB2 0.05mg
ナイアシン 0.1mg
ビタミンB6 0.07mg
パントテン酸 0.064mg
ビタミンC 41mg
ナトリウム 1mg
カリウム 275mg
カルシウム 33mg
マグネシウム 13mg
リン 44mg
鉄 1mg
   

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